「分からないから聞く」から「分かるようになるために聞く」へのスイッチング

何回かリリースを経験した中で、1リリースという単位で「何をするか」と同じように「何を学ぶか」をハッキリさせることが結構大事なのではないか、と思ったのでまとめてみます。


機能実現には自信を持てるが、価値実現にはあまり自信を持てない開発チーム

開発の流れをざっくり説明すると、市場からの改善要望や既知の市場障害に応じて要件が発生しており、期初にそれらの幾つかが棚卸されてリリース単位のロードマップが引かれます。その後、細分化されたプロジェクトによってウォーターフォール的/アジャイル的に開発が進んでいきます。

ロードマップ実現のために要件定義~設計~実装と進めていくと「この仕様は要望を満たすのか」が分からなくなる場面があります。その度に、検証側を含めた開発チームのメンバーで議論したり、企画やテクニカルサポートなど顧客と接しているメンバー(以降、フロントと表記)に相談したりします。
開発チーム内だけで議論するかフロントも巻き込むかの判断は、「開発チームとしての判断のしやすさ」によるのかなと思うのですが、どのケースでも「フロントの意見を聞けるなら聞けるほうがマシ」という意識がありました。
これには幾つか原因があると思うのですが、主な原因は

  • 「お客様が機能をどういう風に使ってどういう部分で困りやすいか」の判断材料が開発チームにないこと
  • 「機能のこの部分を充実させると親切だろうけど、どの程度ビジネスとして価値があるのか」の判断能力が弱いこと

だと思います。

この原因に対処するため、今の開発チームは"チーム内でどう判断すればいいか分からないから意見を欲しい"とフロントに相談したりしなかったりしています。

「分からないから聞く」で残るもの

現状のプロセスでは上記の通り「分からないから聞く」を行っています。「分からないから聞く」を行うと、「聞いたから分かる」となります。ここで「分か」ったことは「分からなかったこと」のみです。

何を言いたいのかと言うと、具体的なケースについて「仕様と要望の一致度」を聞いて明らかにするだけでは、次のリリースで別の要件を対応するときにまた同じことを繰り返してしまうということです。

「分からないから聞く」では、未来の「分からないから聞く」が残ってしまうのです。

その場限りの解決から根本解決へのスイッチング

今回の「分からないから聞く」の目的は、「この仕様は要望を満たすのか」を判断することでした。
言い換えると、"開発チームだけで判断できない状態"から"(フロントの力を借りて)判断できる状態"になることが目的でした。

目的をこのように整理すると、"判断できる状態になる"ために他にできることがないか?と考えることができます。
その上でこれまでの開発プロセスの延長で小さく試せることを考えると、「分からないから聞く」に加えて"今よりちょっとだけ判断できる状態になる"ために何かを得ることはできないか?という発想が浮かびます。

そうすると、「分からないから聞く」という事象解決のための行為を「分かるようになるために聞く」という事象解決+学びを得に行く行為へと発展させることができます。

このような姿勢を持てば、同じ聞くという行為の中でも「今回のようなフロントの知見をどうすれば開発チームも取り込めるか」と踏み込んだ質問も出てくるようになって開発とフロントとで歩み寄ることができます。また、「そういう課題は確かにあるから、じゃあこういうタイミングで相談するようにしよう」と現場レベルでのコラボレーションも実現されるようになります。

「何を学ぶか」を明確にする

ある程度開発が続いてきたプロダクトの開発プロセスには、大なり小なり改善すべき問題が生じていると思います。全ての問題を解消する一手など存在しないので、開発スピードを保ったまま改善していくしかありません。
改善のために「xxxxをしよう」というとき、それは"理想の状態"に効率的に向かうための行動提案・様式提案となっているはずです。しかしそれだけだと、行動・様式に沿った結果"理想の状態"に近づくことはできても、同じ行動をずっと繰り返さなくてはいけないかもしれません。

そうではなく、「今その行動をとる目的は何で、じゃあその目的の達成のために何を積み上げていけるか」という「自分たちのレベルを上げるために何を学ぶか」思考で行動提案・様式提案に学びの口を一つでも加えることによって、よりチームにフィットする行動や後に残る学びを得やすくなるのではないでしょうか。


リリース単位で「何をするか」という行動ベースの目標や「どういう状態を目指すか」という状態ベースの目標を立てるのと同時に、「何を学ぶか」という姿勢ベースの目標を立ててみると良いのではないかと漠然と思ったので、考えを整理してみました。

ちょうど次のリリースに向けてまた動き出しているタイミングなので、色々と試しながら次の開発期間を学び多いものにできるよう頑張りたいです。